「愛と裏切りの近代芸能史」というサブタイトルが付されているとおり、明治~昭和の時代を代表する「興行師」5人を取り上げている。
・森田勘谷(歌舞伎)
・大谷竹次郎(歌舞伎 松竹)
それぞれの時代の、エンタメ業界のアントレプレナーたち。
今でこそ、ドラマや演劇の主人公として、つまり一種の「時代のヒーロー・ヒロイン」として取り上げられることも多いそうそうたる面々だ。
しかし、フィクションの世界の人物像は、あくまで一面的。
なにぶん、悪く言えば虚業だし、裏社会ともかかわりの深い世界(特に永田の若いころなどは、チンピラヤクザそのもの)。
興業・作品ごとに、あたりハズレも大きい。また、時代(戦時中)の制約も受ける。ビジネスと捉えると極めて不安定。
そんな世界で名を成す者、いずれも一筋縄ではいかない。
清濁気にせず、ライバルを出し抜き、はめ込み、今でいう敵対的M&Aを仕掛け、しかし時には手を結び・・そういった「ヒール」な側面もしっかり描かれている。
今こうして活字で読むと、彼ら自身の強烈な人生が、そのままエンタメ作品的でもある。
(492文字! おそらく「一発当てる」快感を覚えると、興行師はやめられないのかもね。)