感情的な反発や拒絶ではない、そんなMMTへの批判本が読みたい。
そう思っていたところ、書店の棚で本書に遭遇。
読んでみると、まさに望んでいた内容であった。
MMTを、「突如湧き出た奇天烈理論」とみなさず、従来の学説からの系譜であることを示し、MMTに対し、ある種のリスペクトを置いている。
そのうえで、MMTが現実に即していない点を丁寧に取り上げる。
L・ランダル・レイ『MMT 現代貨幣理論入門』を読んだ際、浅学な私も「この部分の論が弱いな」と感じた部分がいくつもある。本書では、そんなMMTの「現時点の弱点」をコツコツ突いていく。なんだか、読んでいて気持ちがいいw
特に、MMTの前提がハードカレンシーの発行国(さらに言えば主に米国)を前提とした理論ではないのか、という疑問に対して深く掘り下げる。
その結論として、たとえば途上国に対しては、MMT流の経済政策は効果が薄いことを示す。
ただし、それらの批判は、MMTを現実的な経済政策に落とし込むためのヒントに満ちており、建設的な議論といえる。
なお、巻末の訳者解説もわかりやすさが秀逸。MMTの骨子と来歴を手短に理解するには最良のコンテンツかもしれない。
(492文字! ニッチな需要に応えてくれた東洋経済に感謝!なお、巻末には40ページ以上の索引や原注が付いているので、見かけよりもボリュームが少なく、読みやすい。)
▼ 参考書籍