かつて三菱重工爆破事件等を起こしたことで知られる過激派「東アジア反日武装戦線」。
その主犯格への取材を通し、事件に至るまでの過程を詳らかにしたのが本書である。
主犯格は北海道出身で、戦前のアイヌに対する強制的な日本同化政策に強い怒りを持つ。
そこから弱者への共感を広め、戦時中の徴用工、さらには戦後経済発展の裏側で、日本および日本企業に搾取されるアジアの人々のために日本と戦う・・と思いつめていったようだ(それが集団名の由来)。
本書の著者は作家であり、そして市民活動家という顔併せ持つ。それゆえ、犯人達に対して並々ならぬシンパシーを持つ。それが本書の執筆動機となっている模様。
しかし、それが一般人を殺傷する爆弾テロに至ったとなれば、正気の沙汰ではない。
著者は、犯人達なりの正義感を強調し、ある種彼らを擁護する姿勢を随所に見せる。
しかし、本書で描かれた彼らの行動は、爆弾の魔力に取りつかれ、手段が目的化し、「戦争ごっこ」に熱中していったとしか、私には見えない。
そして犯行後は、自らを正当化したい心情から、より過激派思想に凝り固まっていく。
硬直した思想は、狂気になり、凶器になるという、最悪の実例といえよう。
(499文字! 「ポア」といって殺人を正当化し、地下鉄サリン事件を引き起こすに至ったオウムとなんら差はないと思う。)
▼ テロ事件を捜査する公安側から描いた本もある(私はこちらを最初に読んだ)。