前回このブログで取り上げた武者陵司『日経平均は4万円になる!』とおなじ宝島社新書、しかも同日付で発行されている。
しかし、両書は日本経済に対する見方が対照的なのが面白い。
『日経平均は』が賃金低下で日本企業の国際競争力が高まると主張するのに対し、本書は「モノの値段だけが上がり、景気は良くならない」スタグフレーション時代の到来を懸念している。
なお、本書は『日経平均は』と異なり、明確なスタンスや主張があるわけではない。
いわば、デフレスパイラルから抜け出す困難さ等をデータ、あるいは自身の経験からくるエピソードを通して解説するという内容だ。
結論めいたものがないため、モヤモヤした読後感が残る。
一応、消費税増税は愚策と判じ、コロナ下の経済政策については給付金はもっと迅速に配布すべきと論ずる。いわばリフレ派的な主張は見て取れる。
しかし、ちょっと待ってほしい。
現金を国民に配れば、市場に出回るカネが増えるため、相対的にモノの値段は上がるでしょ。
コロナ禍、あるいはウクライナ情勢など、緊迫化する国際情勢下ならなおのこと。
リフレ的な手法を良しとするのであれば、物価上昇を否定するべきではなかろうと思うのだが。
(497文字! 本書は「データと現地調査に基づいたリアルな情報を発信していき」の一文で締めくくられている。つまり主義主張本ではなく、経済面での時事解説を目的とする書籍と捉えるべきであろう。)