500字でまとめよ!

最近読んだ本を500文字以内にざっくり、バッサリまとめてみました。

辻田 真佐憲 『「あの戦争」は何だったのか』(講談社新書 2025年7月20日)

以前読んだ、辻田氏の『「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史』が面白かったので、新著作を購入。

 

表題にある「あの戦争」とは、「太平洋戦争」もしくは、右派からは「大東亜戦争」、一部左派は「15年戦争」呼ばれる・・つまりは第二次世界大戦において、日本が直接関係した戦争のこと。

 

本書の前半では、なぜ人(=思想)によって戦争の呼び名が違ってくるのかを分析。それに関連して、戦争の範囲・期間の定義についての考察などが展開される。

 

また、国力が段違いの米国相手に、どう考えても必負の戦いを挑んだのかについての詳述もある。それらの章は興味深く読んだ。

 

彼我の国力の差は、一般的に知られていたというのが少々意外だ。

 

さて、後半では、「あの戦争」に関する海外各国の見解を調査するため、現地の歴史博物館を歴訪し、その説明文から様相を紐解く。

 

ただし、その手法については、博物館の一般向けに簡略化された説明文を、その国の公式見解と受け取って良いのか、という疑問が湧く。

 

本書略歴によると、著者は大学や教育・研究機関に属するわけではなく、あくまで個人の「評論家」「研究家」であるようだ。それゆえ、調査方法には限界があるのかもしれない。

 

(500文字! 最近は思想・イデオロギーを排した、事実に基づく近代日本の戦争史がトレンドらしい。本書もその一端だ。)

 

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森永 卓郎 『やりたいことは全部やりなさい 最後の後悔しない25のヒント』(SB新書 2025年4月15日)

自転車旅の途中、軽く読める本が欲しいなと思い購入。

 

ちょうど自分はFIRE・・事実上は早期退職する直前であったので、残りの人生を生きる参考になればと思い手に取った次第。

 

同年1月28日に逝去された、モリタク先生なりの「人生後半戦のアドバイス」的な本かと思いきや・・

 

たしかに、第一章は学生や新社会人などの若年層向けの人生指南と言える。

 

とはいえ、それ以降は従来通りの「モリタク生活防衛の為の経済談義」であった。

 

曰く「投資は全部やめなさい」「投資はギャンブルと同じ」「増税地獄を生き抜け」「トカイナカへ移住しよう」等々、旧作ではおなじみの内容だ。

 

序文末尾には「2025年1月15日」とあるので、(これを信じるなら)遺作と言ってよい。

 

とはいえ、亡くなる直前なので、もしかしたら、書下ろし+過去作の再編集で一冊に仕上げたのかも(邪推かな)?

 

モリタクは左派と言われることも多い。とはいえ、昨今の「リベラル」でも、いにしえの共産主義でもない。庶民目線での政府・権力に対する不信感・・その思想が左寄りとみられる要因かな。

 

その意味でスタンスに偏りがあるので、「そういう考え方もあるのか」と参考に留める程度で良いかと思う。

 

(500文字! 昔は「庶民株」なんて本も書いていたのに、最後は投資完全否定になっちゃったな~。晩年は極端なリフレ派になったり、日航墜落事故のトンデモ説に加担したりと、反権力志向が暴走気味なところも見られたがw、行間に感じられる庶民目線の人柄は好ましく思えた。ご冥福をお祈りします。)

 

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モハP 『日本人だけが知らない 世界経済の真実』(ダイヤモンド社 2025年7月15日)

モハピー? ふざけた名前やな。

 

なんや、ユーチューバーか。極端な言説で煽り、注目を集めるタイプかな?

 

書店で本書を見かけたとき、そう思ったのだが、中をパラパラ見ると、意外とマトモそうな内容。

 

版元はダイヤモンド社。割と信頼できる出版社だ。名前だけで判断して悪かった・・そう思い、購入。

 

読んでみると、煽り系どころか、終始落ち着いた語り口で、データもしっかりしている。そのうえ、説明がわかりやすい。

 

なにより、イデオロギー色を一切感じさせないところに好感が持てる(右派・左派のみならず、新自由主義やリベラル等も強いイデオロギーだと私は思っているので)。

 

何せ著者は元機関投資家だそうで、分析~説明の論理がしっかりしており、読んでいて腹落ちする。

 

特に第1章の、日本経済についての解説は、悲観論に陥りがちな世の言説とは一線を画しており、興味深い。

 

さらに解説は、米国、中国、欧州におよび、なぜか英国の解説にも力が入っている(もしかしたら英国方面が、著者のかつての専門分野だったのだろうか)。

 

オールドメディアと称されるマスコミ各種、あるいはSNS等含めて、極端な結論に走りがちな世相に対する、アンチテーゼ的な書籍だと感じた。

 

(500文字! 本記事の時点で、著者Youtubeチャンネル登録者数は23.8万人。煽り系ではないのに、この数字は相当なものではなかろうか。)

 

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井上 弘貴 『アメリカの新右翼 トランプを生み出した思想家たち』(新潮選書 2025年6月25日)

トランプが大統領に返り咲いてから、米国の保守 vs リベラル の対立がより深刻になったと感じる。

 

米国といえば、個人の独立性、自助主義、あるいはMagnificent7に代表される先進技術のイメージが強い。それらはリベラルと親和性が高いように思える。

 

そんな米国で、トランプを機に、保守・自国保護主義が一気に噴出した要因を知りたく、本書を手に取った。

 

本書を読んで感じたのは、まず米国にはキリスト教という保守の下地があり、さらに近年のグローバリズムに対する反発も強く存在する点。

 

さらに個人の独立性や先進技術なども、捉え方によっては意外と保守・右翼と結びつく。

 

なお、現在の保守・右翼の思想潮流は細分化がすすみ、コンサバティブ(保守)の略語であるネオコン・ナトコン・ペイリオコン・リフォーミコン、さらにはオルトライト、テック右翼など、などがある。

 

右派の各潮流間で対立もあれば、同じ潮流内でも人によって考えが異なる場合もある。それらを詳細に解説する本書を読み進めるほどに「木を見て森を見ず」的になり、米国の保守・右翼がかえってわからなくなる。

 

結局のところ従来通り、ざっくり「保守・右派」と捉えるのが無難と感じた。

 

(500文字! 保守・右派と言っても、想像以上に考え方はバラバラ。一時的にそのムードが盛り上がることは合っても、政治に大きな影響を与えるのはむつかしいのではないか。そう考えると、ちょっと安心する。)

 

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土佐 有明 『イカ天とバンドブーム論』(DU BOOKS 2025年3月31日)

今だにネット記事等で論評対象となる伝説のTV番組「イカすバンド天国」。略して「イカ天」。

 

毎週末、10組のアマチュアバンドが出演する賞レース的な内容。

 

玉石混交なバンド、個性的な審査員の面々、演出の面白さ、バラエティ要素等が絡み合い、元々関東ローカルの深夜番組ながら人気爆発。平成バンドブームの象徴となった。

 

本書は、気鋭の音楽ライターが、そのイカ天とバンドブーム全般を論じた一冊。

 

論評だけでなく、関係者へのインタビューも充実。本書の目玉は「審査委員長」的なポジションであった荻原健太氏のインタビュー。イカ天の裏側が語られており、面白い。

 

荻原氏の一言「徒花的な番組だったという気はします」は象徴的。

 

実際、番組放送期間は平成元年からの2年足らず。しかも、番組が本当に盛り上がったのは前半1年間のみ。以降は査員が一新され、その後徐々に失速し終焉を迎える。

 

当時バブル景気終末期、インターネットは未だなく、TV全盛。イカ天を契機に一気にメジャーに駆け上がるバンドが次々と現れた。当時のTVの影響力はすごかった。

 

なお、本書はイカ天回顧にとどまらず、イカ天以降~現在に至るバンドコンテスト史、バンド文化史的な章もあり。

 

(500文字! 当時、私は関東の大学に進学、下宿をして、初めて噂のイカ天をTVで観た。残念ながらピーク後と言われる後半期であったが、それでもBLANKEY JET CITY等の活躍が印象に残っている。本書の存在をネットで知って、つい当時が懐かしくなり購入した次第。)

 

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千々和 泰明 『世界の力関係がわかる本 帝国・大戦・核抑止』(ちくまプリマー新書 2025年5月10日 発行)

ちくまプリマー新書というと、若年層(主に中高生)向けのイメージだが、甘く見てはいけない。

 

本書は、以前本ブログで取り上げた『戦争はいかに終結したか』の著者が、若年層向けに書き下ろした、戦争にまつわる歴史・地政学の解説本だ。これがわかりやすく、意外と内容も深い。

 

話は古代4大文明から始まり、第一次世界大戦(WW1)まで一気に駆け抜け、戦争の原因や対立構造のパターンを解き明かす。

 

本書を読んで、戦争に対する見え方が変わった気がする。

 

個人的にためになったのは、WW1の開戦理由の解説。よく「オーストリア嗣子を暗殺した1発の弾丸が大戦を引き起こした」と言われるが、そこから先の流れがよくわからなかった。本書の解説でナットク。スッキリした。

 

また、「国連はなぜ機能しないのか」の章における、機能しないからこそ大戦を防ぐ構造になっているという説明には意表をつかれた感がある。現在の国連は拒否権が多発され、何も決まらないことが多い。それは、大国たる常任理事国同どうしの対立が戦争に発展することを避けるようになっている、とのこと。

 

気づかされることが多く、しかも文章は中学生でも読めるほど平易。読んで損はない一冊であった。

 

(500文字! 帯や本文中に登場する歴事情人物のユルい似顔絵は、著者本人が描いたものだそうな。プリマー新書だからこそ発表できた特技といえよう。)

 

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斎藤 ジン 『世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ』(文春新書 2024年12月20日 発行)

著者は米国拠点の投資コンサル。この手の経歴の人にありがちな「自己宣伝本」の類かと思って読み始めたが、意外と内容は濃い。充実の地経学書である。

 

著者の見立てでは、覇権国=世界経済ルールを都合よく設定可能な「カジノのオーナー」。

 

日本は戦後、中ソ防共策として、覇権国=米国よりカジノの勝てる席を用意された。その後、日本経済が伸長し米国を脅かすと、米国はルールを変えて日本は負け席に追われた。

 

代わりに、ゲタをはされたのが中国。新自由主義の浸透で専制国家色は薄れると期待されたからだが、その見込みは大外れ。依然一党独裁、さらに米国の覇権に挑む気配を見せ始めた今、中国はゲタを外された。

 

その中国に対抗するに重要なアジアの先進国と言えば日本に他ならない。日本は再び優遇される・・というのが本書の予測。

 

かつて負け席に追われた日本は、雇用確保を最優先とし「失われた30年」=国民的にワークシェアを選択。生産性と賃金は低下し、デフレが慢性化。

 

しかし今、人口減によりその状況は終わりつつある。覇権国の後押しが見込めるこのタイミングで。

 

今後、日本経済は復活のチャンスが十分あると著者は説く。

 

論拠を示しながらの解説は説得力あり。

 

(500文字! 「失われた30年」を雇用確保手段として、ある種前向きに捉える点に好感が持てた。私は以前から「バブルがはじけて景気が悪化し、しかも今後高齢者が増えるとなると、社会全体でワークシェアするしかないだろう。当然一人当たりの生産性は下がる。それを悪いとあげつらうのはおかしい」と思い続けていたので。それ以外にも、わが意を得たり!と思える解説が多かった。それゆえ、本書にはとても好感が持てた。)

 

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