500字でまとめよ!

最近読んだ本を500文字以内にざっくり、バッサリまとめてみました。

河田 皓史 『働く人が減っていく国でこれから起きること』(朝日新書 2026年4月30日)

非婚化・少子化による日本の人口減を論じた書籍は多数ある。

 

また、それらによる労働人口の減少、及び経済への影響にスポットを当てた書籍も多い。

 

本書もそれら問題をテーマとしているが、加えて「FIRE増加による労働人口減」の社会的インパクトに着目しているのが大きな特徴。

 

そして、著者自身が「FIRE願望を持つ非婚単身者」と明かしたうえで、FIREを単に社会的損失とネガティブにとらえるのではなく「なぜFIREをしたがる人が増えたのか」「なぜ結婚する人が減ったのか」の問いを切り口に、今後の社会・経済について分析する。

 

本書は2章立てで構成されている。

 

前半1章では、仕事や結婚に対する昨今の価値観の変化を、データを交えながら深堀り。さらにはFIRE増加により、どの程度労働人口が減るかのシミュレーション、その結果経済はどう変化をするか等を考察する。

 

後半2章では、FIREや非婚化の抑止が可能かを論じ、さらに現状の傾向で100年間人口が減り続け、日本の人口が3千万人となった場合の社会のありようについても考える。

 

価値観の変化は受け止めたうえで、今後の社会の方向性を考えるリアルさが秀逸。折に触れて読み直したい一冊だ。

 

(500文字! ちなみに、私自身が単身フルFIRE民。まさに自分事が書かれているようで、興味深く読んだ。今のところ、今年読んだ本の中でNo.1だ。)

 

 

山下 公子 『ヒトラー暗殺計画と抵抗運動』(講談社選書メチエ 1997年4月10日)

ナチスドイツ下における各種の抵抗運動と、ヒトラーが狙われた爆殺未遂事件(七月二十日事件)が本書の2大テーマ。

 

前半は当時の社会情勢、および抵抗運動が語られる。

 

連合国側寄りの姿勢からナチスに抗するものあれば、逆に親ソ連の立場から、あるいは王政復古主義的な思想から抵抗する者もあり。

 

あるいは政府の統制・国粋主義に反発する若者グループあり、単なる反社的ギャング団あり。

 

ナチス下のドイツというと、国民全員が熱狂的にヒトラーを支持していたイメージがあったが、意外とそうではないことが示される。

 

後半の、七月二十日事件に関する記述が本書のクライマックス。

 

ナチスを扱う映画などで、この爆弾爆発のシーンはよく描かれる。それらの影響で、単発小規模な暗殺といった印象を持っていたが、実態は想像以上に大規模な計画であった。

 

多くの軍要人が関係している。完全にクーデター計画だ。

 

現在ではこの暗殺事件の詳細は驚くほど明確になっており、一連の流れが事細かく語られる。

 

ただ、計画にかかわる要人がそれぞれ異なる政治志向をもっていたりと、一枚岩とはいえない。関係者の中にはどっちつかずの人物もいたりと、大規模な密謀は難しいことがよくわかる。

 

(500文字! しばらく前に、ブラッド・メルツァー他『ローズヴェルト、スターリン、チャーチルを暗殺せよ』というヒトラーが仕掛けた暗殺(未遂)計画がテーマの本をここで取り上げた。その直後に本書をブックオフで発見。これも何かの縁と思い購入。)

 

 

廣末 登 『ヤクザが消えた裏社会』(ちくま新書 2026年2月10日)

以前、本ブログで取り上げた『テキヤの掟』の著者による新刊。

 

『テキヤの掟』はルポ中心の薄味な内容であったが、本書は著者の専門である「犯罪社会学」の視点から、暴力団を中心に、半グレ、トクリュウ、外国人犯罪集団等、幅広く現在の「反社」を論じる。

 

その中で本書が特に主張するのは、暴力団員の社会復帰の困難さである。

 

暴力団から脱退後、5年間は銀行口座すら作れない。今時、給与現金渡しの職は稀ゆえ、給与の受取すらできず就業が困難。クレジットカードや携帯電話も持てない。生活が成り立たず、犯罪の世界に逆戻りする(これを本書は「元暴アウトロー」と呼称)ケースが多発しているという。

 

暴力団の社会復帰を促す仕組みが必要であると、本書は強く訴えている。

 

その点は確かに重要であろう。

 

とはいえ、暴力団の社会復帰は民間任せで成り立たないと思う。元暴力団員など、怖くてどんな会社も雇用したくないであろう。

 

民間で銀行口座が作れないのであれば、それこそ「警信」(※)の傘下に特別な金融機関を作り、常に警察が取引を常に監視特殊な金融機関を作る等の手法はどうだろうか。

 

雇用にしても、社会復帰用の特殊な職場を行政主導で用意するしかないと思う。

 

 ※警信:警察職員のための職域金融機関

 

(500文字! 著者は、自身の複雑な生い立ちから不良になり、そのころから暴力団に接した経験があるという。その後、一念発起し大学に通い、学者になったという変わり種。)

 

 

 

 

 

伊藤 将人 『移動と階級』(講談社現代新書 2025年5月20日)

帯裏の「あなたがまだ知らない移動階級社会の実態」という一文が気になり手に取った。

 

「移動」に焦点を当てに、現代社会の格差を鋭く分析する社会学方面の書か・・と期待して読んでみたが・・結果、少々期待外れ。

 

実際にそのような方向性の内容だが、分析結果がエピソード的にずらずらと羅列されている感じ。

 

しかも、その分析結果がさして目新しいものでもない。一般的な肌感覚に近い結果が明示されるにすぎない。

 

まあ、社会学というのは、人々が「なんとなく常識として把握していた社会構造」を、データ等を使って明確に分析し、学術的に位置づける学問という面がある。

 

そのため、社会学系の読み物では、「そんなこと(なんとなく)知ってたよ~」という分析結果が並ぶのは珍しくない。

 

ただ、本書の分析はその羅列のみに終始している印象。

 

そして、分析についても、的外れに思えるケースも多い。

 

一例をあげれば、「海外に行きたかったが行けなかった経験の有無」をアンケート調査し、「ある36%」「ない64%」という結果を得ているのに、圧倒的少数の「ある」を細かく分析したりする。

 

「移動」を重視するあまり、「移動」を過大評価してしまった・・そんな残念感がある。


(500文字!未読ではあるが、しばらく前に『移動する人はうまくいく』なるタイトルの自己啓発本がベストセラーになっていたことは知っている。ぶっちゃけ、その人気に便乗した感のある本だ。)

 

 

 

ブラッド・メルツァー ジョシュ・メンシュ 『ローズヴェルト、スターリン、チャーチルを暗殺せよ 知られざるナチスの陰謀』(河出書房新社 2024年4月30日)

第二次世界大中、ナチスドイツが、連合国側の三巨頭ローズヴェルト、スターリン、チャーチルに対して仕掛けた暗殺計画について書かれた実録読み物。

 

ナチスがイラン内に築いたスパイ網を使い、さらに本国から工作員を送り込み、テヘラン開催の三巨頭会談の際に暗殺を狙った極秘計画。その当時関係者の証言を基に、ストーリー仕立てで書かれている。

 


・・とまあ、概要を紹介すると面白そうなのだが、実際は未遂事件ゆえ、竜頭蛇尾な読後感が残る。

 

この暗殺計画は、ムソリーニ奪還で名を馳せ、ヒトラーもお気に入りのナチス有名軍人オットー・スコルツェニーが手動的役割を果たしたとされる。しかし、計画進行中に戦況が一気に連合国側に傾き、その混乱の中で、計画がどの程度機能したかは不明瞭のまま本書は終わる。

 

まあ、スパイ網のグダグダぶりや、素人臭い工作員など、失笑を禁じ得ないお粗末なエピソードもあり、計画はマトモに機能しなかったのだろうな・・という印象だ。おそらく苛烈な戦況により、ナチスの人材は枯渇気味であったのだろう。

 

なお、本書ではサブテーマ的に、会談実現までの各首脳の駆け引きも臨場感たっぷりに活写している。そちらのほうが読みごたえあり。


(500文字! 登場人物の後日談で驚いたのが、上記のナチスドイツ軍人オットー・スコルツェニー。彼は大戦後もその名と腕を買われて世界の戦地を渡り歩き、さらには傭兵集団を作り、なんと一時イスラエルのモサドと契約して働いていたとのこと。イスラエルが元ナチスを雇うとは・・戦争屋のコネクションは奇々怪々。)

 

 

 

高橋 陽介 『シン・関ケ原』(講談社現代新書 2025年10月20日)

「天下分け目の関ケ原」

 

よほど不勉強でない限り、関ヶ原の戦いを知らない日本人はいないであろう。

 

[東軍]天下簒奪をもくろむ実力者 家康が有力諸侯を統合挙兵 vs [西軍]前権力者秀吉の忠臣 石田三成が名目の大将として毛利を担ぎ対抗・・というのが大方のイメージであろう。

 

実際、歴史博物館等でもそのような説明がなされているケースは多い。

 

しかし、本書はそのような見方を「国民的作家 司馬遼太郎によるフィクション」として否定する。

 

本書によると、従来のストーリーを排し、当時の書状などの一次資料から「関ヶ原」の全体像を捉えなおす作業が在野の研究者によって進められているという。

 

その結果、上記の[東軍]家康 vs [西軍]三成という見方が否定されてきているという。

 

では、どのような形で見られるようになってきたかというと・・おっと、これ以上内容を紹介するとネタバレになるのでやめておこうw

 

まあ、考えてみれば、従来の「関ケ原」像は、物語仕立てな感が強い。

 

講談や巷での口碑を経て、司馬の小説が定番ストーリーを決定づけたという形だろうか。

 

「関ケ原」の劇的なエピソードの数々が否定されるのは寂しい気もするが、現実とはそういうものであろう。

 

(500文字! 司馬遼太郎作品は、豊富な知識を基に、史実から導き足した考察をストーリーへと昇華するケースが多い。その分、史実と創作の区別がつきにくい。司馬の家康三部作『覇王の家』『関ヶ原』『城塞』は面白いんだけどね~。もっともらしい話だからといって、信じ込んでしまってはいけないというところか。)

 

 

藤倉 善郎 菅野 完 他 『陰謀論と排外主義 分断社会を読み解く7つの論点』(扶桑社新書 2025年12月1日)

陰謀論、極右、排外主義&ヘイトなど、従来はトンデモ扱いな存在であったが、近年、社会の表に出てきた感がある。

 

ヘイトデモや財務省解体デモなど、そういう極端な主張が一定の指示を集めるようになってしまった。

 

あまつさえ、それら周辺から国政政党まで出てくる始末だ。

 

その現象を、現場に入り込む形で観察してきたライターたち計7名が、それぞれの視点から解説するのが本書(1人1章、計7章)。

 

1~3章は主にヘイト・陰謀論等の言論現場素描。4章以降は、それらの来歴や、社会への影響などを論じる。

 

印象に残ったのは1章の著者の言う、デモ参加者への「真面目に考察しても仕方ない。そういう人なのだ」という評。

 

世の知識人は、彼らに対して「対話を」と主張するが、もとよりマトモな対話が成り立つ人達でないことが良くわかる。

 

さらに、それらのデモは、トンデモ思想でまとまった集団ですらなく、陰謀論界隈住人の雑多な集合体だという。さらには固定ファンを獲得したいマイナー芸能人等が迎合して入ってきたりと、まさにカオス状態。

 

そんなモロにトンデモな人が、候補者手薄な地方選挙で立候補し、当選にこぎつける例も出ており、国の将来が少々心配になってしまう。

 

(500文字! とはいえ、そんなトンデモ主張が、メジャーになるとは私は思っていない。本書にもあるが、陰謀論周辺から発展した参政党も、国政の場に出てからは主張を修正している。ひとたび世に出ると、主張の明らかな間違いや問題点は、SNS等で叩かれるからね~。陰謀論のフィルターバブルは、マイナー世界でこそ強力に働くのではなかろうか。)