500字でまとめよ!

最近読んだ本を500文字以内にざっくり、バッサリまとめてみました。

西村 秀一 『新型コロナ「正しく恐れる」II 問題の本質は何か』(藤原書店 2021年6月30日 初版第1刷発行)

まじめな学術系の出版社から出た、新型コロナの解説・提言本である。

 

帯には「呼吸器系ウイルス感染症の第一人者による提言」とある(著者の肩書は国立病院機構のウイルスセンター長)。そのため、内容的には十分信用できるし、良書であると思う。

 

ただ、これまでも当ブログで、ウイルス・感染症の専門家の書いた「新型コロナ本」を何冊か紹介してきたが、著者によって主張が結構異なるのが気になる。

 

例えば、本書の著者は、コロナ禍以降に飲食店で見かけるアクリル板等の仕切りは、あまり意味がないと主張する。

 

一方、以前取り上げたコロナ本の著者(感染症専門医で大学教授)は、仕切りを肯定している。

 

いずれも、十分な実績と見識を持つ本物の専門家である。

 

結局、専門家から見ても、まだ統一的な見解が出せる段階ではないのだろう。

 

ただ「過度に恐れず」「ゼロリスクを求めるべきではない」というメッセージは、おおむね各専門家一致している。

 

本書のような信頼できそうな本をいろいろ読み、情報を仕入れ、あとは自分で納得できる対策を日常でとれば良いと思う。

 

本書でも述べられているように、過度に規制を強化して、人間らしい生活を犠牲にすることのないように。

 

(496文字! 「コロナ本」を読んで各専門家の意見の相違を見つけるのが楽しみになりつつある。)

 

山本 康正 『2025年を制覇する破壊的企業』(SB新書 2020年11月15日 第1刷発行)


米国のIT企業が世界の産業を席巻する未来予想が一冊通して述べられている。

 

GAFA、そしてテスラ推し。さらに、日本ではあまり知られていない、米国の新興IT企業が次々と紹介される。

 

その潮流に日本は飲み込まれ、旧来型企業の淘汰は避けられないと語る。そして、著者はその流れを良しとする「新自由主義者」タイプだ。

 

確かに著者が言うように、ITジャイアントが今後の社会・経済において、大きな位置を占めるのは間違いない。

 

とはいえ、それだけで社会が回るわけもない。

 

基本的にIT企業は「黒子」という印象。既存のビジネスを上手く結び付けたり、効率化するのが得意。

 

本気を出せば、本書でも描かれているようにM&Aを活用して、有望企業を傘下に収め、表舞台に躍り出ることも可能だろう。しかし、そうすると既存の巨大企業や勢力と真向からぶつかって消耗する。独占禁止法も脅威となろう。

 

この手の本は「淘汰される」「生き残れない」といった切り捨てワードを多用するが、大げさなんだよね。

 

一般消費者・普通の企業が疲弊して経済そのものが縮小してしまったら、IT企業側も困るだろうw

 

ポジショントークとして捉え、参考になる情報だけ取り込めばいいかな。

 

(500文字!  アレクサのようなデバイスが、日常的にこまごまレコメンドを出すのを「コンシェルジェのよう」と好意的捉える記述があるか、そうかなあ。ウザいと考える人、多いと思う。)

 

長沼伸一郎 『現代経済学の直観的方法』(講談社 2020年4月8日 第1刷発行)

私は学生時代、経済学を専攻していた。しかし、結局経済のことが良くわからぬまま卒業してしまった。

 

今はどうか知らぬが、当時受けた講義は「需要・供給曲線」にはじまり、経済を部分的に切り取りモデル化した解説が目立ち、聞いても「だから何?」としか思えなかった。

 

振り返り思うに、経済学を学ぶ意味合いを説き、経済全体の包括的な解説を担う授業があれば良かったと思う。

 

(昔は「マルクス経済学」が、ある種その役割を果たしていたのかもしれない。しかし私の学生時代には既に廃れており、そっち系の講義はなかった。)

 

そのため、本書を読み終えた時には「学生当時、こんな本があれば良かったのに」と思った。

 

まさに、私の受けた一連の講義に欠如していた、経済の包括的な解説が詰まっている。

 

GDPを超わかりやすい図解で説明し、経済の歴史や、貨幣論、貿易論等を、平易な言語で、誰でも理解できるように単純化して解説してくれる。

 

「単純化が過ぎる」と思えてしまう部分もなくはないが、その弱点を補って有り余る、万人向けのわかりやすさがある。

 

経済学の学びなおすに良書であるとともに、これから経済を学ぶという人にも入口の一冊として本当におすすめしたい。

 

(499文字! 書名や装丁がいかにも本格経済書風なのが惜しい。大型書店でも学術書の棚に置いてあった。中身はいたって一般向きなのに。もっと取っ付きやすい作りにすればいいのに・・と思う。)

 

岩瀬 達哉 『キツネ目 グリコ森永事件全真相』(講談社 2021年3月9日 第一刷発行)

毒物入り食品を小売店に忍ばせるという無差別テロ的な脅しで、食品メーカーを恐喝した「グリコ森永事件」。

 

世間を震撼させ、警察は総力を上げて捜査したものの、犯人は捕まらぬまま時効を迎えたことは良く知られている。

 

犯人は「かい人21面相」と人を食った名を名乗り、脅迫状ではベタな関西弁で警察を嘲弄するという、一種の劇場型犯罪として有名だ。

 

色々と興味深い事件であるが、事件全貌を把握している意外と人は少ないのではないだろうか。私もそうだ。

 

タイトルの「全真相」の文言に、つい惹かれてこの本を手に取った。

 

本書では、グリコ森永事件の発端から終結までを、時系列に沿い、警察や事件に巻き込まれた人物の証言ふんだんに織り交ぜ、臨場感たっぷりに描き出す。

 

そこで驚くのは、ここ一番での、犯人の異常なまでの悪運の強さ。

 

普通なら間違いなく逮捕されている状況を、ちょっとしたツキや、捜査のほころびに恵まれ逃げおおせている。まさに「怪人」。

 

また、店舗にばらまいた毒入り食品に「どくいりキケン」シールを貼って注意を促すなど、不謹慎ながら、犯人には妙なユーモアを感じる。

 

ウケ狙い口調の脅迫文など、このノリからして、犯人はぜったい関西人だな。

 

(500文字! なお、本書は事件の総括的な内容となっており、事件にまつわる新事実の発見を世に問う、といったタイプの作品ではない。)

 

池上 彰 的場 昭弘 『いまこそ「社会主義」 混迷する世界を読み解く補助線』(朝日新書 2020年12月30日 第1刷発行)

 少々古臭いイデオロギー社会主義」、そこにあえてスポットを当てた本だろうか・・書店で見かけ、興味を惹かれて購入。

 

確かに近年、新型コロナ以降、社会主義寄りと思われる政策が話題になることが多い。

 

国・自治体主導のワクチン接種にしてもそうだし、各種給付金についてもその匂いがする。

 

あるいは、コロナ禍以前から注目を集めているベーシックインカム論なども、社会主義的な色合いを感じる。

 

どうやら、昨今大手をふって歩いていた新自由主義へのカウンターとして、社会主義的な要素が再注目されているようなのだ。

 

そういった部分を掘り下げる内容を本書には期待した。

 


しかし、読んでみるとテーマが全体的に取り散らかり気味で、まとまりがない。ちょっと期待外れ。

 

社会主義国の成立や、その実情といったところは、過去の遺物といった感があり、あまり興味がない。

 

社会主義的手法の、どうゆう部分が、現代社会においてどう有効なのか。そういうところを知りたかったのだが、それほど具体的な論がない。

 

知識的にも、既知の部分が多く、薄味な読後感であった。

 

(448文字 対談本の新書って、あたりハズレがあるよね。)

 

ジェラルド A エブシュタイン『MMTは何が間違いなのか? 進歩主義的なマクロ経済政策の可能性』(東洋経済新報社 2020年12月30日 発行)

感情的な反発や拒絶ではない、そんなMMTへの批判本が読みたい。

 

そう思っていたところ、書店の棚で本書に遭遇。

 

読んでみると、まさに望んでいた内容であった。

 

MMTを、「突如湧き出た奇天烈理論」とみなさず、従来の学説からの系譜であることを示し、MMTに対し、ある種のリスペクトを置いている。

 

そのうえで、MMTが現実に即していない点を丁寧に取り上げる。

 

L・ランダル・レイ『MMT 現代貨幣理論入門』を読んだ際、浅学な私も「この部分の論が弱いな」と感じた部分がいくつもある。本書では、そんなMMTの「現時点の弱点」をコツコツ突いていく。なんだか、読んでいて気持ちがいいw

 

特に、MMTの前提がハードカレンシーの発行国(さらに言えば主に米国)を前提とした理論ではないのか、という疑問に対して深く掘り下げる。

 

その結論として、たとえば途上国に対しては、MMT流の経済政策は効果が薄いことを示す。

 

ただし、それらの批判は、MMTを現実的な経済政策に落とし込むためのヒントに満ちており、建設的な議論といえる。

 

なお、巻末の訳者解説もわかりやすさが秀逸。MMTの骨子と来歴を手短に理解するには最良のコンテンツかもしれない。


(492文字! ニッチな需要に応えてくれた東洋経済に感謝!なお、巻末には40ページ以上の索引や原注が付いているので、見かけよりもボリュームが少なく、読みやすい。)

 

 

▼ 参考書籍

佐高 信 『佐藤優というタブー』(旬報社 2021年3月10日 初版第一刷発行)

プロの論客、というべき人たちが存在する。

 

本書の著者の佐高氏もそうだし、また本書が批判の対象としている佐藤優もそうだ。

 

世の中にあまた存在する思想・価値観の代弁者として、彼らは必要だ。

 


しかし、その一方で、私は彼らを「論壇という名のリングで闘うプロレスラー」と見ている。

 

観客を引き付ける演出に長け、年がら年中闘っている。

 

闘うこと自体がビジネスとなっている。

 

 

本書では、佐高氏が、かつてのタッグパートナー(2冊の共著あり)を、

 

「知識だけの、中身空っぽヤロー!」

 

と、のっけから怒涛の攻撃を見せる。

 

「おまえカルヴァン派とか言うとるやろ。それがなんで創価学会に媚び売りまくりやねん!」

 

おおっと、いきなりの急所攻撃!

 

 

ただし、佐藤批判のパートは、本書の1/3ほど。

 

次いで、著者の各種論評アンソロジーが1/3。

 

残りの3/1が「読書日記」と題された、ごく簡単な読書メモ、という構成となっている。

 

最後の読書メモはあまりに簡素で、商業出版のコンテンツになっている=需要があることが少々驚き。

 


佐高氏は「社民党系」の論客として知られる。

 

プロレスラーに例えれば、マイナー団体のスター。故に熱烈なファンを持つ・・そんな存在なのだろう。

 

(499文字! タイトルに商業的な狙いを感じる。私も書店でチラッと目にして、つい買ってしまった。)