500字でまとめよ!

最近読んだ本を500文字以内にざっくり、バッサリまとめてみました。

井上 達也『決定版 小さな会社の社長の戦い方』(明日香出版社 2023年12月25日 初版発行)

前回、前々回と、経営学系の面白エッセイを紹介した。

 

今、オモシロ経営学が、来ているのかな?

 

そう思って、大型書店の経営学のコーナーを訪れたが、そういう感じでもない。あの2冊が突発的な存在だったようだ。

 

しかし、アカデミックな経営学ではなく、ビジネス書的な範疇まで含めると、面白そうな新刊が見つかった。

 

それが今回紹介の書籍。

 

なにせ、帯には「お客様ゼロから業界トップになった社長が泥臭い話、ぜんぶ語ります」とある。

 

中身は帯の惹句の通りで、失敗エピソードの羅列。

 

もちろん、その失敗例からの反省も併せて語られるわけだが、「学びの書」というより、単純に読み物として面白い。

 

学びから示される成功法則も多数示されるが、個々で矛盾しているように思えたりと、内容はやや取っ散らかり気味。


しかし、面白エッセイとして読む分には問題なし。また、自分の勤める企業を対比しつつ読むと興味深い。

 

特に、冒頭で語られる「どんなものでも少しは売れてしまう悲劇」には、共感。

 

新商品を出して、少し売れて、それを軌道に乗せようとしてあれこれ努力するも、結局は少ししか売れない・・これはよくあるわ~。

 

仕事上の「あるあるネタ」として読めば、面白さ倍増。

 

(500文字! 面白エッセイではあるが、裸一貫で起業することの大変さは伝わってきた。)

 

決定版 小さな会社の社長の戦い方

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高橋 勅徳 『アナーキー経営学 町中に潜むビジネス感覚』(NHK出版新書 2024年2月10日 第1刷発行)

前回取り上げた、岩尾俊兵『世界は経営でできている』に続いて、本書を読んだ。

 

本書も『世界は』と同様、一般向け経営学エッセイだ。

 

著者の肩書も、どちらも大学の准教授。しかも発行時期はほぼ同じ(わずか3日違い)。もしかして著者どうし知合いで、時期を示し合わせて出版したのだろうか。

 

さて、本書は著者の趣味(釣り・筋トレ・プラモデル 等)や、町中でのちょっとした気づきから説き起こし、経営学的な視点から、それらの業界のビジネスモデルについて解説するというスタイルをとる。

 

『世界は』ほどエンタメエッセイ色は強くないが、気軽に読めて、生活において役に立つ考え方を提示する点は共通している。

 

そして、身近な世界にこそ経営学のテーマがあるというスタンスも、両者似ている。

 

経営学というと、通常は事業のマネジメントや戦略、ビジネスモデルの分析等々、企業向けのノウハウの集積をイメージする。

 

しかし、考えてみれば、現代社会における生活は、企業による生産物に囲まれている。それらを考察・解析することにより、経営のエッセンスに行きつくこともできるはず。

 

世にあふれる、ありきたりなビジネス経営書に対する、著者なりのアンチテーゼを感じた。

 

(499文字 今回読んだ経営学エッセイ2冊により、経営学に対するイメージが変わり、すこし興味が湧いた。)

 

アナーキー経営学 街中に潜むビジネス感覚 (NHK出版新書)

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岩尾 俊兵 『世界は経営でできている』(講談社現代新書 2024年2月7日 第1刷発行)

帯の赤太字「一生モノの思考法」に惹かれて購入。

 

著者は慶応大商学部の准教授。経営学博士。

 

そう書くと、真面目なビジネス系読み物に思えるだろうが、実際には、経営に絡めた面白エッセイ。

 

自らの文体を「令和冷笑体」と称する。あきらかに、その昔、椎名誠らが流行させた「昭和軽薄体」エッセイのフォロワーだ。

 

最近、その手のエッセイは少なく思う。久々にこのような文体を読むと新鮮でR。

 

そして「経営」というと企業経営を思い浮かべるが、本書によればもっと幅広い概念とのこと。いわば「物事にうまく対処し、最適解を得る」ことを指すようだ。

 

そのため、本書では「日常」「貧乏」「家庭」「恋愛」「勉強」など15のテーマを著者なりの経営視点で語り、問題解決のTipsを示す。

 

ベースが面白エッセイなので、読んでいて全く肩がこらず、そして生活の役に立つ。

 

さらに、文中の見出しはすべて名のある文学作品等のタイトルをパロディしたもの。ウィットに富み、手の込んだ作りとなっている。

 

そんな中、時折真面目な解説も混ぜるバランス感に好感が持てる。

 

気軽なエッセイの体をとることで、懐のひろい「経営」の概念を多くの人に伝えたい・・そんな著者の思いを感じた。

 

(500文字! 昭和軽薄体ぽい新作エッセイを読みたい方におすすめ。)

 

世界は経営でできている (講談社現代新書)

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阿部 恭子 『高学歴難民』(講談社現代新書 2023年10月20日 第1刷発行)

結論から言うと、期待した内容ではなかった。途中で読むのをやめた。

 

タイトルを見て、大学や大学院を卒業しても、その後の仕事につながらないという社会的ミスマッチをを考察・分析した本かと思って手に取った。

 

自分自身もかつて、一応大学を出たものの、アルバイト含め、職を転々とした過去があるがある。それゆえ、この問題は他人事とは思えず、興味をもった次第。

 

しかし、実際の内容は、高学歴でありつつも、犯罪に走ったり、問題行動を起こしたりした人々の、個々の事例のルポだ。

 

事例として、極端すぎるケースばかり。

 

ネット空間にあふれる、怪しげなで大げさなエピソードと大差ない。

 

そんな話が延々と続くのみ。本当にもう、それだけ。

 

しばらく読み進んだのち、得るものはないと思い、放り出した。

 

今のところ、本年読んだ本のワーストだ。

 

(336文字 実にしょうもない本であった。)

 

高学歴難民 (講談社現代新書)

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野口 悠紀雄 『プア・ジャパン 気が付けば「貧困大国」』(朝日新書 2023年9月30日 第1刷発行)

この著者の本を読むのは始めて。

 

著者が経済関連の書籍を多くものしている、有名大学の教授ということは知っていた。

 

しかし、一時やたら仮想通貨を過大評価していたり、その後も生成AIだのリモートワークだの、時々の話題に食いつく多作ぶりが「売らんかな」主義に思え、これまで敬遠していた。

 

そして、本書はこれまた最近流行テーマの「日本没落」もの。新刊で買う気にならず、たまたまブックオフで見かけた際に購入。

 

読んでみると、内容は意外とまともで、新たな知識や気づきを得ることができた。

 

論調は、大前研一あたりに似ている。

 

これまでの成功体験に縛られた日本は、GAFAMに代表されるIT産業の波に乗れず。会社や社会構造も旧態依然としており、このままでは世界に取り残される・・という内容。

 

ただ、過去にとらわれているのは、著者のほうじゃないの?という気がするのも事実。

 

いつまで全盛期の日本を懐かしがっているんだよ、と思う。

 

かつて途上国と言われた国々だって奮闘しているわけで、いつまでも日本が「アジア唯一の先進国」であることのほうが不自然に思える。

 

そもそも、全盛期の日本経済が、外的要因に恵まれた幸運の要素が強いと、個人的には思う。

 

(500文字 経済に関する解説はわかりやすく、主張に共感するかはともかく、面白く読めた。)

 

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高石 鉄雄 『自転車に乗る前に読む本』(講談社ブルーバックス 2023年10月20日 第1刷発行)

スマホニュースで紹介記事を見かけ、購入。

 

タイトルに「自転車に乗る前に」とあるが、自分はロードバイクに乗り始めて既に5年以上。自分なりに効果的な漕ぎ方を漠然と追い求めてはいた。しかし科学的メカニズムにまで深く興味を持つことはなかった。

 

レース志向者向けには科学的アプローチのトレーニング本が多数出版されている。しかし、ゆる乗り者の自分にとって、そういうのは縁遠いと思っていた。

 

ことろが本書はレーサー向けではなく、普段乗り・ゆる乗り者向けで、健康づくりに主眼を置いた、効果的な自転車の乗り方・漕ぎ方をデータから追及した内容となっている。

 

どの程度漕げば、効果的な運動強度になるのか、生理学的な根拠も併せて解説。

 

また漕ぐ程度の強さが、数値だけでなく、感覚的なキツさでも示されており、参考になった。

 

なお本書終盤では、蔵内脂肪蓄積によるメタボが、いかに体にダメージを与えるか説明があり「その解消のために自転車がおすすめ」という論が展開される。

 

メタボ気味の自分にとっては、意外と深刻なメタボのダメージのほうが気になり、怖くなった。

 

今後も自転車で運動不足解消しよう、その前に、太らないよう気を付けよう。そう強く感じた。

 

(500文字!ちなみに、著者は自転車には乗らないらしいw )

 

自転車に乗る前に読む本 生理学データで読み解く「身体と自転車の科学」 (ブルーバックス)

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前田 昌孝 『株式投資 2024 新NISAスタート、大転換を読み解く』(日経プレミアシリーズ 2023年11月9日 1刷)

以前、同著者の『深堀り!日本株本当の話』という書籍を、本ブログで取り上げたことがあり、名前は知っていた。

 

たまたま昨年末、本作を書店で見かけて購入。

 

調べてみると、2022年より、『株式投資 20XX』と題した書籍を、年一冊のペースで出版しているようだ。

 

株式投資なぞ昔からあるので、そんなに新たなネタが毎年出るものかという気がしなくもない。実際、本作冒頭には「一昨年と昨年に出版した『株式投資 2022』や『株式投資 2023』の焼き直しではありません」の一文が。著者も気にしているんだw

 

ただ、2024年については、新NISA開始という大きなトピックもあり、タイムリー。本書でも一章分をまるまる新NISAに当て、詳細に解説。証券会社のお手盛り解説記事とは異なり、冷静な視点が良い。

 

その他、ロボアド、ラップ口座、ESG投資、証券ベンチャーなど、一昔前に話題になったトピックの現状解説もあり、興味深い。

 

この手のネタは証券業界主導の客寄せの面が強いので、旬を過ぎれば忘れられがち。それをしっかりフォロー・評価する点に好感が持てた。

 

最近では投資雑誌を読まなくなったので、せめて年一でこのシリーズだけは読むようにしよう。

 

(500文字! 以前愛読していた投資雑誌はとっくに廃刊。しかしネット上にあふれる投資記事は業者案件のものが多く信用度が低い。本書ならば株式にまつわる概況ををまとめて知ることができて、便利。)

 

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