サブタイトルに偽りあり、という気がする。
ウィキペディア(イタリア語「マーノ・ネーラ」の項)に記載がある通り、ブラックハンドは「単一の組織の名称では無く、複数のギャング組織が行っていた犯罪行為の総称」と捉えるべきであろう。
それを無理やりマフィア時代前夜における米国の、イタリア系巨大犯罪結社のように描き、対する警官ジョゼフ・ペトロシーノ(こちらもイタリア系)を完全無欠のスーパヒーローのように配することで、善vs悪の英雄譚を作り上げている。
昨今の映画では「実話に基づく」が大流行りだが、本書もディカプリオ主演で映画化されるそうな。ハナから映画化を狙ったような「実話」に見えなくもない。
ただ、巻末の長大な引用一覧から察するに、労作であろうことは確か。過去の新聞記事等の情報の辺々を、想像力でつなぎ合わせて大衆受けするストーリーに仕立て上げたのだろうか。
とはいえ、背景として描写される移民時代の米国は興味深い。アイルランド系→イタリア系と続く移民は、ことごとく先着民より差別受けていた状況が活写されている。
米国の深層に横たわる差別意識の連鎖が、この大衆受けを狙った物語の、一つの主題となっている。
(495文字! 差別をものともせず、実力でのし上がった、清廉潔白な「イタリアのシャーロックホームズ」の物語・・・う~ん、ちょっと嘘くささが漂う。そこそこのボリューム、値段も高めの本。)