「人類史上最悪の内戦」と書かれた帯に惹かれて、つい手にとった一冊。
太平天国や、そのリーダー洪秀全の名は、歴史の教科書に載っているので、知っていた。
とはいえ、その実情は良く知らない。
キリスト教に感化されたリーダーによる内乱というから、中国版「島原の乱」程度の話かと漠然と想像していた。
しかし、本書を読んでびっくり。どえらい内乱、当時の清王朝と天下を二分するほどの国内大戦争だ。
太平天国と言えば、中国の異端的キリスト教集団として語られることが多い。しかし、土着のシャーマニズムと結びつき、さらには清朝に対する民族的反発感情、さらには経済格差からくる困窮民を惹きつけたりと、その内実は多層的で複雑。
それだけに、寄集め軍が時の勢いを狩って清朝に攻め込んだ色合いも強く、勢いが失われると一気に瓦解。各地土着の人々には無縁の新興宗教が土台だし、長期間勢力を保つのは元々無理だったかな、という気もする。
なお、宗教的な志向から、一応、人民平等を説き、共産主義的な分配重視政策を取った点は、興味深い。困窮する人々は、そりゃ目の前の分配に惹かれる。
歴史の舞台において、ある種、中国共産党の前座出演であったようにも思える。
(500文字! 清朝の汚職体質は有名だが、それより幾分統制がとれているとはいえ、根がカルト宗教の太平天国が天下を取ってたら、もっとヤバいことになっていたように思う。)