500字でまとめよ!

最近読んだ本を500文字以内にざっくり、バッサリまとめてみました。

西田 亮介 『コロナ危機の社会学 感染したのはウイルスか、不安か』(朝日新聞出版社 2020年7月30日 第1刷発行)

新型コロナの発生から、その後の政府や医療関係機関の対応、そしてメディアの姿勢等を、現時点で総括した本である。

 

一般向けを意識して平易に書かれてはいるが、学術的な側面も強い。時系列的に様々なファクトを並べ、俯瞰的に関連性を考える。

 

明確でわかりやすい「論理のストーリー性」は薄く、大向受けするタイプの書籍ではない。

 

しかし、手持ちの本の奥付を見ると「10月10日第2刷」となっており、意外と売れている。

 

これは、コロナ禍での「インフォデミック(情報のパンデミック)」というワードにスポットを当てた点が要因かと思う。

 

コロナ報道について「センセーショナリズム先行」「怖さを強調する情報ばかりが強調」「いい加減な情報も混じる」と感じる人は多かろう(私もそうだ)。

 

しかし、この点を論じるメディアは本当に少ない。

 

本書では、SNSやワイドショー的なTV等から拡散する情報、それがどのような影響を与えるかの考察から、現代社会における「リスクコミュニケーション」の模索へと至る。

 

スカッと結論が導き出されるわけではないので、モヤっとした読後感が残る。

 

しかしそれは、今回のコロナ騒動があぶり出す、情報社会のリアルなのだろう。

 

(496文字!  TVをはじめとするメジャーなマスコミがスルーしてしまう側面を突く。オワコン風に語られる「本」には、そういう役割があるんだ・・と、改めて感じる次第。)

 

会社四季報編集部 『会社四季報 公式ガイドブック』(東洋経済新報社 2020年7月2日 第1刷発行)

完全に実用本位の解説書なので、本来であれば感想を書くようなタイプの本ではない。

しかし、内容がとても気に入ったので、取り上げてみることにした。

 

私は株が好きなので、当然ながら「会社四季報」の活用指南本の類は、これまでにも読んだことがある。

 

また、株のハウツー本では、四季報の見方に触れているケースも多い。

 

そもそもが、記載内容の見方については、四季報巻頭に詳しい説明がある。

 

とはいえ、指南本や入門書の解説は網羅性に欠けるし、四季報内の解説はやたらとわかりにくい。

 

そのため、四季報の各項目について、本当に理解したうえで活用できているか・・と聞かれると、自信がなかった。

 

ハンパ者としての自覚が、本書の購入を促した。

 

本書の装丁は、いかにも初心者向けな印象。派手な黄色地に、ネコ?のキャラが飛び跳ねている。

 

最初こそ「何年も株をやっているのに、今更こんな解説書を・・」という恥ずかしさもあったが、読んでみて大正解。

 

己の理解が中途半端な部分が次々とあらわに。

 

さらには、ネット上の誰が書いたかわからない「解説」をうのみにして、誤解してしまっている項目もあった。

 

読んで、スッキリした。

 

通勤時間を利用して、2回読んでしまった。


(500文字! 所々に挟まるコラムで、四季報オンラインの活用法も紹介されている。これも良かった。)

 

倉山 満 『保守とネトウヨの近現代史』(扶桑社新書 2020年10月1日 初版第1刷発行)

無縁の世界を覗くことができる。それは読書の楽しみの一つだ。

 

ネトウヨ・・私からは縁遠く「そういう人たちがいるのだな」という認識しかない。

 

そもそも、もっと大きな括りの「保守」からして、ひまひとつその考え方がわからない。

 

どういう理論体系なのかな?そんな興味から本書を読んでみた次第。

 

 

結論から言うと、おおまかな印象程度は得られたが、とらえどころのなさは変わらず、といったところ。

 

著者いわく「保守」は論理ではなく、情緒で動くとのこと。そりゃ、他者には理解できん。

 

なお、本書のスタンスは、保守やネトウヨ業界の俯瞰ではなく、著者の「最近の保守業界」に対する意見表明だ。

 

門外漢の私にとっては、狭い閉じた世界の喧々諤々、という印象だ。

 

実は、以前「新左翼」方面の元活動家が書いた本を読んだことがある。その時も同様の感想を得た。

 

保守、右翼、左翼・・etc

 

これらの用語は元々「思想」「言論」「イデオロギー」にまつわるものであったが、現代社会にノイジーに氾濫するそれらは、偏愛的趣味・嗜好。いわば「サブカル」の類だ。

 

アニメキャラのコスプレを競い合う人たちと変わらない

 

私には関係ないな。

 

それがわかっただけでも読んだ価値はあった。

 

(500文字! 「近現代史」とか、重々しいタイトルがついているが、実際は週刊誌の記事のようなノリで書かれた本だよ。)

 

樋口 裕一 『頭のいい人の「説明」はたった10秒!』(青春新書 2020年8月25日 第1刷)

またもや「話し方」本を取り上げる。

 

やっぱり、私のような口ベタ、話しベタだと、様々な場面で損をする。

 

そのため、本書の副題「仕事も人生うまくいく」といったキャッチコピーを見せられると、つい購入してしまう。いいカモだ。

 


さて、本書では、まず第一章で、話し方の骨子となる4原則と、付随テクニック14種が語られる。

 

読後の感想をズバリ言えば、本書はこの第一章がすべてだ。

 

本章は簡潔でわかりやすく、役に立つと思う。


ただし、実践編というべき第2章移行は、微妙だ。

 

(1)依頼

(2)謝罪

(3)抗議

(4)反論

 

以上の4シーン別に、各種テクニックが語られる。

 

ただ、たとえば(1)依頼の例題シチュエーションは「生活費が足りないから10万円貸してほしい」と会社の同僚に頼む、というもの。

 

なんか、昔のコントのような設定だ。

 

そして「正論で攻める」「戦略的にほめる」「賢く脅す」などの話術が具体的に紹介される。

 

実践例は、いよいよ「コントのセリフ」の度合いを深めていく。お金を貸してもらうのに、正論も、脅すもないだろうw

 

読んでいて、クスッと笑ってしまう。

 

ハウツー&エスプリな路線を狙った本なのだろうか。

 

面白く読めたから、まあいいけど。


(497文字! 第2章以降は、あまりうのみにしない方が良いかと思う。)

 

伊藤 祐靖 『邦人奪還』(新潮社 2020年6月15日 発行)

帯には「自衛隊特殊部隊が動くとき」「現場のリアルがここにある!」とある。

 

さらには、石破茂佐藤優成毛眞という濃い面々の推薦コメントも。

 

そのわりには、妙にチープな表紙イラストが気にかかるが、興味を惹かれ、内容を見ずに購入。

 

読んでみると、小説であった。

 

北朝鮮の動乱に乗じて、自衛隊特殊部隊がかの国に潜入し、邦人(拉致被害者等)を奪還するというストーリーだ。

 

ミリタリー冒険小説の日本版と言えようか。その手の本にありがちな、国際謀略や組織の力学も絡む。

 

著者は自衛隊の「特殊部隊」の創設に深くかかわったという人物というのが一つウリになっている。

 

そのため、組織の描写はリアル感がある。

 

ただ、本職の小説家でないためか、肝心の人物描写が甘く、どの登場人物も「顔がない」印象だ。

 

そのため、まったくキャラクターに感情移入することなく、淡々と読み終えた。

 


大掛かりな出兵の割には、クライマックスの戦闘は小規模。冒険小説の肝であるスリリングな展開もなく、今一つ盛り上がりに欠ける。

 

エンタメ性は薄く、「自衛隊特殊部隊もし戦わば」が主題のシミュレーション小説といったところか。

 

ミリタリーマニア向けの本と思えた。

 

(491文字! 自衛隊に精通した作家が書いた、自衛隊が主役のリアル系ミリタリー小説。珍しい作風の本だとは思う。)

 

デービッド アトキンソン 著 『日本企業の勝算 人材確保×生産性×企業成長』(東洋経済出版社 2020年4月9日 発行)

2019年にヒット作となった『日本人の勝算』の続編、というより補完編といえようか。

 

著者の主張は前作と全く同じ。「日本には小規模な企業が多すぎる。それが非効率化の元凶。効率・生産性を高め、世界に伍していくには、全般的に企業規模を大きくしないといけない」というもの。

 

本作は、考え方の裏付け資料を多数掲載、解説を加えている。

 

考え方はわかる。

 

しかし、読み進むうちに、ツッコミどころもいろいろと思い浮かぶ。

 

中でも、もっとも大きな疑問が、著者のいうような小企業を統合して規模を大きくする、あるいは人材を大企業が傘下に吸収する、などといったことが可能なのかどうか。

 

それは、そもそも、資本主義の原則に反していないか?

 

世界的競争力を持つ大企業は、人材確保やM&Aなどは自分の都合判断で行うだろう。

 

小企業の合併はなおさら困難。小企業は経営者の物=家業というケースが多いわけで、だれが自分の一国一城を失いたがるだろうか。

 

ただ、今後人口減少により、競争力の低い小規模企業が減り、大企業(および大企業の卵といえる競争力のある小企業)の比率が高くなる可能性はある。

 

つまりはこういうことだ。

 

レッセフェール


(491文字! 新作ということで、もうすこし新たな理論展開があるかと期待したのだが。「続編はイマイチ」のパターン。)

 

森永 康平 『MMTが日本を救う』 (宝島社新書 2020年6月24日 第1刷発行)

著者名を見た時にピンと来た。

 

著者紹介を見て、やっぱり!

 

森永卓郎氏のご子息とのことだ。

 

確かにモリタク理論とMMTは、相性が良さそうだw

 

そんな興味本位で購入した次第だが、内容は意外と良かった。

 

タイトルからもわかる通り、本書は、コロナ禍への経済政策提言が主題だ。そして、MMTはその手段・考え方という位置づけである。

 

しかしながら、MMTを説明した章が、非常にわかりやすい。

 

MMTの解説本といえばL・ランダル・レイ『MMT現代貨幣理論入門』が有名だ。しかし、平易に書かれているとはいえ、学術的要素が強く、しかも長大(冗長に思えるところも・・)なので、一般向けとは言い難い。

 

本書は、MMTのエッセンスをコンパクトにまとめ、誰にでもわかるよう形で、やさしく解説してくれる。

 

個人的には、MMTを「(その名の通り)貨幣とは何かということが本質」と釘を刺している点に好感が持てた。

 

なにせ、書店に並ぶMMT関連書籍は、「MMTからの派生理論」の解説書が多く、「MMT=ジャブジャブ緩和策」という、ある種「ズレた」イメージが世に広まっているように思えるので。

 

著者には今後、「MMT解説」に特化した新作を期待したいところだ。

 

(500文字! 本書は著者の第一作とのこと。今後たのしみ。)