著者はとにかく多作な人である。次から次へと本が出る。そのため、著作によって内容の濃淡、読む側からすれば、「あたりハズレ」がある。
そんな中、大上段に振りかぶったタイトルが目を引く『世界史の極意』は、「あたり」の部類に入る作品だ。
佐藤氏は「作家」の肩書を名乗るが、実際には時事批評・解説者の印象だ。本書も出版当時の時事ネタをフィーチャーしているが、歴史の捉え方が主題なので、今(出版から3年経過)読んでも鮮度落ちには感じなかった。
「帝国主義とは」「資本主義とは」「民族問題」「宗教対立」といった、佐藤氏の得意テーマがコンパクトに一冊の新書にまとまっている。
それぞれ単独のテーマに絞った著作も多数あるが、「内容の深み」と「わかりやすさ」のはざまで迷走してしまっているケースもある。
本書だと、各テーマを通して読める俯瞰性があり、私にはわかりやすかったかな。とりあえず、この一冊さえ読んでおけば、だいたいオッケー。
なお、佐藤氏の解説は明確さが売りなので、「あたり」の本を読むと、物の見方の「正解」を得た気になってしまいがち。それを回避するために、たまに「ハズレ」の本を読んで、首をかしげることも必要かな?
(497文字! ~ 本の帯には「初の世界史入門!」のコピー。う~ん、ちょっと内容とずれてるかな。)