「年末といえば中原圭介」のジンクスは、今年も生きていた。
それにしても、タイトルが『疫病と投資』。こんなテーマで堂々と本を出せるのは中原圭介しかいなかろう。
巻頭一行目から「私の現在の職業は経済アナリストですが、学生時代には歴史学を専攻しました」。お約束の中原節だ。
疫病の社会・経済への影響を語るとなれば、歴史を紐解く必要がある。そして投資を前提に未来予想を行うとなると、中原氏はまさに適者。
本書では、前半で人類と疫病の関わりの歴史が語られ、現在の新型コロナへの各国の対応状況の概略が続く。
そして後半で、新型コロナがもたらす社会変化における投資のヒントが述べられる。
個人的には、本書で解説される各トピックについては、既知のものが多かった。
しかし、それらを平易な文章で再編集して、最終的に投資のヒントに集約する手法は中原氏ならでは。
なお、本書のタイトルを見て「コロナ禍で金儲け」と捉え、嫌悪する人もいるだろう。
しかし、疫病の克服に役立つ製品やサービスを提供する企業は、報奨を受けるべきだ。
そして、企業にとっての報奨とは利益だ。
そんな企業の一員(=出資者)になることは、社会への貢献だと思う。
(492文字! 中原氏の最近の著作は新書やごく簡素な装丁のものが多かった。しかし本書のデザインは悪くなく、出版社も力を入れて作ったことが見て取れる。)