500字でまとめよ!

最近読んだ本を500文字以内にざっくり、バッサリまとめてみました。

中藤 玲 『安いニッポン 「価格」が示す停滞』(日経プレミアシリーズ 2021年3月8日 1刷)

帯に大書きされた「年収1400万円は低所得」に興味を惹かれ購入。

 

かつて日本の物価高は世界的に有名であったが、今は逆に安い。そのことを示す具体例が本書では列記される。

 

確かに、日本のデフレ傾向は根強く、世界的に見て、日本の賃金、物価等が相対的に低下しているのは事実だと思う。

 

しかし、読んでいて湧き上がる違和感はなんだろう。

 

まず、中国をはじめとするアジア諸国との物価水準が近く(物によっては日本の方が安く)なりつつあるという。

 

しかし、今や日本がアジアで突出した先進国であった時代とは違う。当然の推移であろう。

 

(ついでに言えば、日本製品の輸出には有利で、悪いだけの状況でもない。)

 

また、日本の賃金水準停滞を本書は嘆くが、超高齢化社会を迎え「高齢者の積極活用」を謳い、世代を超えたワークシェアリングを進める中で、賃金が上がるわけない。

 

でも、それは間違った方針ではないはずだ。

 

高度経済成長~バブル景気へと至る過去の栄光を懐かしむのは、もう止めなよと思う。

 

さらに言えば「年間賃金」と年収は違うだろう。投資や副業等で収入は増やせる(現に私もそうしている)。

 

賃金と収入を一緒くたに論じる部分にも強い違和感を覚える。

 

(498文字! 否定的に書いたが、新たな知見もあったし、買っただけの価値はあった。)

 

 

 

<おまけ>

帯の「年収1400万円は低所得」の種明かしをすれば、ごく限定的な市場の歪みの話だ。

 

コロナ前には、IT企業の一極集中でサンフランシスコの家賃が高騰したニュースをときどき目にした。その時代に「米住宅都市開発省がサンフランシスコで年収1400万円の4人家族を『低所得者』に分類した」ということ。

 

つまり、その時代の、その町限定の話。しかも世帯収入が基準だ。

 

しかしコロナ後はテレワークの普及により、その歪みは小さくなりつつあるという。

 

思えば、バブル時代、東京23区の土地で、全米の土地が買えるといわれた。

 

市場のゆがみ、バブルを切り取って、あたかも普遍的な傾向のように言うのは、フェアじゃないな~。