帯に大書きされた「年収1400万円は低所得」に興味を惹かれ購入。
かつて日本の物価高は世界的に有名であったが、今は逆に安い。そのことを示す具体例が本書では列記される。
確かに、日本のデフレ傾向は根強く、世界的に見て、日本の賃金、物価等が相対的に低下しているのは事実だと思う。
しかし、読んでいて湧き上がる違和感はなんだろう。
まず、中国をはじめとするアジア諸国との物価水準が近く(物によっては日本の方が安く)なりつつあるという。
しかし、今や日本がアジアで突出した先進国であった時代とは違う。当然の推移であろう。
(ついでに言えば、日本製品の輸出には有利で、悪いだけの状況でもない。)
また、日本の賃金水準停滞を本書は嘆くが、超高齢化社会を迎え「高齢者の積極活用」を謳い、世代を超えたワークシェアリングを進める中で、賃金が上がるわけない。
でも、それは間違った方針ではないはずだ。
高度経済成長~バブル景気へと至る過去の栄光を懐かしむのは、もう止めなよと思う。
さらに言えば「年間賃金」と年収は違うだろう。投資や副業等で収入は増やせる(現に私もそうしている)。
賃金と収入を一緒くたに論じる部分にも強い違和感を覚える。
(498文字! 否定的に書いたが、新たな知見もあったし、買っただけの価値はあった。)
<おまけ>
帯の「年収1400万円は低所得」の種明かしをすれば、ごく限定的な市場の歪みの話だ。
コロナ前には、IT企業の一極集中でサンフランシスコの家賃が高騰したニュースをときどき目にした。その時代に「米住宅都市開発省がサンフランシスコで年収1400万円の4人家族を『低所得者』に分類した」ということ。
つまり、その時代の、その町限定の話。しかも世帯収入が基準だ。
しかしコロナ後はテレワークの普及により、その歪みは小さくなりつつあるという。
思えば、バブル時代、東京23区の土地で、全米の土地が買えるといわれた。
市場のゆがみ、バブルを切り取って、あたかも普遍的な傾向のように言うのは、フェアじゃないな~。