先日「リフレ派の代表格が日銀副総裁に登用」との報道あり。その話題の人物、若田部氏の著作を読んでみたいと思った次第。
「お金をばらまけば景気は良くなる」と唱えるステレオタイプなイメージから、所謂「リフレ派」には、従来より懐疑的な印象を抱いていた。
しかし本書で、氏の主張はそこまで単純ではないことを知ることができ(当たり前だ)、面白く読めた。
一口にリフレ派といっても、様々な考え方があるのだろうが、著者の主張の骨子をなすのは「オープンレジーム」、つまり規制緩和・自由化による経済成長の促進である。
金融緩和については、一つの手法として否定はしない。しかし特段ジャブジャブを推奨しているわけでもない、そんな印象だ。
なお、論理的なモデルから話を進めるので、一般向けの新書としては、ややコムヅカシイ内容といえる。
また、論理が明らかに現実からかい離している?と感じられる部分もある(※)。
とはいえ、「経済成長のエンジンとなる、新たな成長産業がどこにあるかは誰にもわからない。国にもわからない。だから国は民間の邪魔をするな。不要な規制で縛ったり、特定の産業を支援したりするな」という主張にはかなりの説得力を感じた。
(499文字!)
(※)一例を上げると「現在賃金があまり上昇してないということは、日本経済にはまだ失業者がおり、いわゆる(労働力の)供給不足には陥っていない」と述べている箇所がある。
しかし現実は、廉価な海外製品との競合、縮小する国内市場での競争激化=利益圧迫により、企業が賃金を「上げたくても上げられない」状況に陥っていることは、一般の企業労働者なら、日常的に感じていることであろう。
閉じられた理論世界での思考は、つい「ごく当たり前の現実」さえ見えなくしてしまう危険性があることを感じた。