最近の円安傾向を受け、政府・日銀を非難したり、日本経済の危機を主張する本は数多い。
しかしそれらの多くは「売らんかな」の意図含みの煽情性が感じられる。そして内容をパラ見しても論理が単純であったりする。
もっと中立的なスタンスで、為替の現況を理詰めで解説する本はないかと探していた際、本書に出会った。
まさに望んでいた内容であり、円安の要因を複合的な視点から解説。
データやグラフも明確で、好感が持てた。
ただ、分かりやすい本かというと、そうでもない。
著者は一般向けを意識して書いたと述べているが、内容がやや専門寄り。
さらに、言葉は平易だが、妙に堅苦しい文体が余計難しく感じさせる。
そのため、理解が追いつかない時は、ちょい前に戻り、意図や理論立てを確認しながら読み進めることになった。
自然と為替についての知見が深まる。
特に第一章で語られる「国際収支の発展段階説」は興味深い。長い目で見れば日本は「債権取り崩し国」に近づき、経常収支赤字が円安の理由付けとされる可能性は高いと感じた。
こういう視点に立てば、目先の為替動向に一喜一憂するのは無駄に思えてくる。
今回の円安騒動が鎮静化した後も、価値を保ち続つであろう1冊。
(500文字! タイトルと内容が今一つマッチしていない感があるのが、やや残念な気がした。)