ロシアによるウクライナ侵攻以来、地政学的テーマを扱う本が増えた。本書もその一つ。
タイトルの強烈さが際立っており、手に取ってしまった。
著者はフランスの人口・人類学者であり、その視点からの「ロシアと西欧の文化が相当異なる」と指摘する。
ロシア人と欧米人、人種的にはほぼ同じで、見た目も似ている。
しかし、個人主義の欧米に対し、ロシアは強烈な家父長制・大家族制。それらは集団主義と親和性が高く、宗教がそれを強化している。
それゆえ独裁的な権力者を受け入れる文化的素地があると著者は主張する。
西側目線で見れば暴虐で無謀に見えるロシアの行動は、いわば、かつてのイスラム国対欧米と同様、文化の軋轢が大きな原因となっているという見立てだ。
なぜ、プーチンのような独裁者が長々と担がれ、しかも動員兵制のような政策がまかり通るのか、そんな疑問が本書を読んで幾分か腑に落ちた。
なお、著者は侵攻の直接的な原因を、NATOの「約束を破った」東方拡大に求める。他のロシア・CIS専門家の書籍でも見られる主張だ。
ロシアに肩入れする必要はないが、一般的な報道ではほぼスルーされている情報なので、ベース知識として押さえておきたい点といえる。
(500文字! タイトルは少々大げさ。思ったほど第三次世界大戦の危惧には触れていない。)