ビジネスで付合うにおいて、中国はやりづらい国だ。
個人的な印象では、勝手に仕様を変えたり、契約内容を違えたりと、つまりは「いいかげん」に思える。
その理由を独特の政治体制に求めるビジネス書は多いが、この本はそれらと一線を画す。
本書では、かの国において連綿と培われてきた文化(価値観・世界観等)が欧米先進国と全く異なり、その点こそが各トラブルの根本原因と主張する。
ゆえに、中国の歴史を紐解き、古典文学を例とったり、文化面から中国を深堀りしていく。そこから理解しないと、中国人(実際には漢人になろうか)の思考回路は理解できないとの立場だ。
「幇」「宗族」といっ中国ならではの人間関係の概念を、三国志演義のエピソードを借用し、軽妙に解説。独特の語り口でぐいぐい読ませる。
また、契約や法律の概念が欧米先進国とは異なるという主張も興味深い。
本書の目的からするとビジネス書になるが、全般的に文学解説的な要素が強い。その独自スタンスに好き嫌いが分かれそうだ。
しかし、本書は親本が1996年発行、その後連綿と読み継がれ、2021年に新装刊行というロングセラー。それだけの支持を得ている事実が、本書の主張に重みを与えている。
(500文字! とにかく三国志からの引用が多い。ずいぶん前だが、吉川英治版の『三国志』を読んでいてよかった。)