副題に『「大中華圏」と『日米豪印同盟』のはざまで」とある通り、米中対立が本書のメインテーマだ。
出版時のタイムリーなネタとして「菅政権」も取り上げているが、全4章のうち菅新政権が主役なのは第1章のみ。他3章はすべて「米国(+同盟国)vs 中国覇権」にあてている。
前著レビューでも書いたが、手嶋・佐藤コンビの対談シリーズの特徴は、鋭い指摘力だと思う。
■安倍・トランプのカードを失ったのは習近平にとって痛手
■現在の米中対立を「新たな冷戦」見立て、戦闘はないとタカをくくるのは危険
■中国共産党が目指しているのは、(旧ソのような)イデオロギーの覇権ではなく、国益の最大化
このあたりの論が印象に残った。
中国は国力を背景に周辺国家にブラフ含みで強硬に接し影響力を拡大していくスタイル。つまりは、ハッタリを武器にディールを行うトランプ似ている。
お互い交渉者なので落としどころを探って話を付けやすい。
また、意外と親中な一面も見せてきた(中国からすれば与しやすい)旧安倍政権の果たした「役割」も無視できない。
ただし対立は続くので偶発的な衝突の危険性はある。
あまり一般的なメディアには出てこない(出しづらい)見方だと思う。
(500文字! 表現が大げさかな?と感じる部分はある。セールス用の演出・味付けだろうけど、その点が本シリーズの好き嫌いを分けるような気がする。)