「世界的戦略家」ルトワック氏による、日本への提言・未来予測を思わせるタイトルだが、日本について重点的に書かれているのは、全9章の内、第1章のみといってよかろう。
実のところ本書は、巻末の訳者解説によれば、ル氏来日の際に行ったインタビュー及び、既存の論文、講演録をまとめて構成した物とのこと。なんだ。
しかし、内容は非常に面白い。
北朝鮮問題から、戦争論、軍隊論、はたまた著者の提唱する「地経学(地政学に経済の側面を加えて発展させてた考え方)」まで広範囲にわたる。
特に、地経学に基づくトランプ政権の戦略評価は、同政権の既存のイメージを(部分的にだが)覆すものがある。
また、特殊部隊論には特に力が入っている。佐藤優あたりの「インテリジェンスもの」が好きならおすすめ(笑)。元軍属の筆による、本書ほうがリアルだしね。
米国の特殊部隊が肥大化し、しかも安全性重視で機能不全に陥っている様の解説には、笑ってしまった。
自衛隊には特殊部隊が必要という意見も飛び出す。日本としては「はい、そうでっか。作りまひょ」というわけにはいかないが、思考実験としては面白い。
戦略家気分になって、世界を相手に、頭の体操ができる刺激本だ。
(499文字! それにしてもアンソロジー企画本に、うまいタイトル付けよったな。ダマされて買っちゃったよ。さすが「世界的戦略家」。)