司馬遼太郎の著作等を通じて、その名称と多少の概要は知っていた。
しかし本書を読んで驚嘆。これほどひどい戦いであったとは。
事件というよりは、かつて大陸方面に領土拡大を求めた日本と、ロシア間のれっきとした戦争だ。
ノモンハンは、広大な原っぱのような土地であり、特に資源や、戦術上の重要性があるわけではない。
なぜ、そんな場所で、悲惨極まりない消耗戦を行わねばならなかったのか。
これは単に、帝国主義・拡張主義で「領土」を広げた日本(および現場責任者)のメンツと、自己正当化だろう。
本書は、NHK取材班がTV番組制作用に行った取材がベースとなっている。広い視聴者・読者を対象としているので、事件の全体像がわかりやすくまとめられている。
当時の世界情勢、戦況の拡大、実際に戦闘に参加した兵士の証言、事件の主導者たちの主張と大失敗後の責任のなすりつけあい。
次々出てくるテーマは、いずれも興味深く、一気に読めてしまった。
そして読後に感じた。
慎重論を消極的と封じ、根拠の薄い楽観論と精神論が幅を利かせ、そして失敗すれば責任のなすりあい。
これ、今の日本の企業文化のそこここに、色濃く残っているのではないか。
(498文字! 本書における、ある種の主役といえる「辻政信」というエリート軍人は、善悪は別にして、とても興味深いキャラクターだ。この人の残した著作も追って読んでみよう。)