500字でまとめよ!

最近読んだ本を500文字以内にざっくり、バッサリまとめてみました。

辻 政信 著 『潜航三千里 完全版』(株式会社毎日ワンズ 2019年8月15日 第一刷発行)

前回記事で取り上げた『ノモンハン 責任なき戦い』でキーパーソンと扱われていた、辻政信の著作。

 

第二次世界大戦の日本の敗戦後、海外戦線にいた著者が、名を変え、変装し、キケン渦巻くアジアの地を遍歴した様の回想録である。

 

親本は1950年に発売され、ベストセラーに。本書はその新装復刊だ。

 

三つの点から、非常に面白く読んだ。

 

まず、戦犯として捕縛されかねない状況下、蒋介石率いる国民党に渡りをつけるため、機転を利かせながら虎口を脱し、歩を進める様は、まるでリアルスパイ小説。

 

そして、一般的にあまり語られることのない、敗戦前後の海外の日本軍の様子が、当事者目線で克明に描かれているのも興味深い。

 

最後に、辻のキャラクター。「軍事の天才」から「巨悪」まで、非常に毀誉褒貶の激しいいことは『ノモンハン』で読み知っていたが、本書からうかがえるのは、使命感が非常に強く、行動力と頭の良さを併せ持ち、同時に感激屋で、日本にいる家族を思う感傷的な男の姿。

 

ただ、その突出して強い「使命感」が、戦時中の軍隊の価値観に準拠したものなので、現在の価値感から断ずれば、独善的で悪魔的と評されるのかと感じた。

 

英傑と巨悪は矛盾しない・・


(499文字! ただ、ある国際政治学者による前書きでは「最近の研究によると、ノモンハン事件は日本軍の大勝利であった」の一文があり、いきなり興ざめ。それはさすがにね。

 

ニュートラルな視点で読んでこその本だと、個人的には思う。)