文字だけが躍る一風変わった装丁が気になり「ジャケ買い」した一冊。
著者紹介の写真を見て驚いた。ギリシア危機の頃、かの国で財務大臣を務めていた人物ではないか(特徴的な顔立ですぐにわかった)。
当時は、EU側を相手に、ムシのいい主張を繰り返す首相のブレーンという認識であり、混乱に乗じたポピュリズム政党の一員とかと思っていた。
本書を読んで、著者に対する印象がガラッとかわった。
経済を根本から言葉で考える、学者らしくない学者だ。経済の仕組みを、だれでもわかる言葉で、平易に、具体例を挙げながら語る。
危機当時の「ムシのいい主張」の理論もうかがい知ることができた。
著者は金融機関の「信用創造機能」を極めて恣意的なものとみなしている。貸し出すお金を「どこからともなく」出すと本書の中で何度も主張している。
おそらくEU側との融資を巡るやり取りも「どこからともなく出してくるテキトーなモンだろ。加盟国が困ってるんだから、さっさと貸せ」という気持ちがあったのだろう。
意表を突いた主張だなあ。
一見、身勝手とみられた当時の主張は、金融システムを介して実体から遊離した経済に対する、彼なりの、渾身のツッコミだったのかもしれない。
(500文字! すらすら読めるけど、内容は深い。)