一時世を騒がせたQアノン等の政治的な陰謀論がどのような形で世に広まるのか、どのような層に受容されているのかを、統計的推論を用いた「サーベイ調査」で追求したのが本書。
その結果「SNSが陰謀論を広める」「知識不足が陰謀論を受容しやすくする」という世間一般のイメージを否定するに至る。
これはこれで一つの調査結果として興味深い。
ただ、個人的に気になったのは、回答集計の方法。
1)そう思う
2)どちらかといえばそう思う
3)どちらともいえない
4)あまりそうは思わない
5)そう思わない
という、ありがちな5択アンケートがベースになっている点。
1)3)5)は良いとして、2)4)については、相当濃淡があると思われる。
怪しげな言説は曖昧模糊な要素を含み、それに対して「絶対ある/ない」と判断できる人は少ないのでは?
1)に近い2)もあれば、3)に近い2)もあろう。
それなのに1)2)を肯定的として一括りにしたがる傾向が見られる(これは本書に限らないが)。
そうしたほうが「怪しげな陰謀論がこれほどに信じられている」というインパクト大な結論がでるが、それは正しい分析といえるのか?
世論の分析の難しさを本書で感じてしまった。
(497文字! ビビッドな結論が出たほうが、わかりやすく、その分析には注目も集まる。だから、世論分析はことさらインパクトの強い結果を出したがるのではないか?そんなことも思った。)