Qアノンの米議会襲撃で陰謀論に興味を抱き、読んだ本の一つ。
本書では、陰謀論に限らず、宗教カルト、疑似科学、怪しげな健康法、近年「スピリチュアル」と名を変えたオカルト等、怪しげな言説を広汎に解説する。
これら「トンデモ」系の話は、事件を起こした時だけ批判的な識者解説が各メディア上にあふれるが、のど元過ぎればなんとやら。平時はサブカル的な扱いであり、モノ好きしか興味を持たない。
そんなマイナーなトンデモ系の人や思想体系、団体などの、来歴・関係性をつまびらかにし、斯界の全般像を提示する。
トンデモ批判の精神を行間から感じるものの、基本的には冷静かつフラットな視点で解説。
文章は平易で、好奇心を満たすエンタメ本としても読める。とはいえ、ふざけた内容ではなく、一種アカデミックな匂いすら感じる。こういう本を待っていた。
全く別個と思えるトンデモが、思想系譜で見ると繋がっていたり、自分は未知だが一定数「信者」を擁するトンデモ理論を知ったりと、新たな発見に満ちている。
各節先頭に、解説対象のキーワードを羅列し、記憶に残りやすくする工夫もグッド。
こういう良書が、多くの人(特に若い人)に読まれることを切に願う。
(497文字 トンデモ批判書の多くはバッシング性が表立ち、それがトンデモに親和的な層が手に取ることをいっそう妨げているように思える。本書のようにフラットなスタンスのほうが幅広い層にアピールできて、啓蒙性も向上すると思うのだが。)