中国が掲げる技術立国スローガン「中国製造2025」を中心に、かの国の世界戦略を詳細に解説した書籍・・そう書くと、「ああ、最近多い中国脅威本の類か」と思われるかもしれない。
しかし、本書は一味違う。
独特なのは著者の経歴。戦中に中国で生まれ育っているので、中国人民の考えが皮膚感覚として身についている。
加えて、食料封鎖された長春で「餓死体の上で野宿」したという苛烈な体験もあり、中国共産党に対するシビアで冷徹な目線も併せ持っている。
そのためだろうか、後学の知識で中国を追う、学者やアナリストとは、分析の角度と深みが違う。
最近なにかと話題になる「米中経済戦争」も、本書を読んだ後では違って見えてくる。
なお、上記の体験談からもわかるように、著者は相当高齢なはず。しかし量子暗号や宇宙開発等の最新技術にも強く、要所を押さえた解説はとてもわかりやすい。
「親中」「嫌中」いずれでもなく、ファクトを述べてグイグイ引っ張っていく文章に引き込まれる。
そして、読むうちに、行間から立ち上る、中国に対する押さえきれない愛憎・激情に気圧される。
その熱気にあてられ、暫く読むのを中断してしまったほど。
様々な意味で、内容が濃い本だ。
(500文字! 地政(経)学系の本は書き手の感情が「濃い」ことが多いが、本書はとりわけ濃い。)