第一回アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップに於けるホイス・グレイシーの活躍は衝撃的であった。
突如「グレイシー柔術」なる格闘技が注目を浴びた。
それまで日本の格闘技界は、UWF系プロレス団体を別とすれば(当時はそれらも「格闘技」の範疇とみなされていた)、フルコンタクト系空手やキックボクシング等の打撃中心であった。
それが突然、組技・寝技こそが有効技術とみなされ、価値観がひっくり返った。
加えて「柔術」なる古めかしい名称が印象的であった。
なぜに柔術?
そんな疑問が頭に浮かんだ。
あの衝撃から幾星霜。
2021年末に出版された本書に、その答えが詰まっていた。
明治以降、日本と海外との交流は一気に進み、その流れで柔術も早々に海外に紹介され、米国・欧州で一種のブームを巻き起こしていたのだ。
純粋な格闘技のみならず、趣味・レクリエーション的な形で、広く世に受け入れられたのが面白い。
グレイシー以降、ブラジリアン柔術の来歴に関しては「前田光世」の武勇伝等、断片的に知識を得てはいた。
しかし、本書により柔術の、世界伝播の流れが俯瞰できて、いやあ、腑に落ちた。
柔術を文化史として学問的に探求した貴重な作品だ。
(499文字! グレイシー台頭当時、当時私が一生徒として所属していた空手団体の王者が日本人格闘家としてはじめてアルティメット大会に挑んだものの、あっけなくホイスに締め落とされた。あれはショックだったな~~)