私はバブルよりもやや後の世代だ。そのため、その時代を生きてはいたが、本当の意味ではバブルを知らない。
本書は、バブル時代にちょうど社会人となったTVプロデューサーが、身近な目線と体験談から当時の世相を振り返り、解説するという内容だ。
なにせ、東京の真ん中、民放キー局というメディアの中心で当時を経験した方なので、バブル時代に対する印象もひとしおなのだろう。バブルへのある種の思い入れが、強く伝わってくる。
その一方で「いくら文字にしても、表現しきれないんだよなあ・・」的なもどかしさも行間に漂っている。
ライトエッセイ的な語り口なので、全般、面白くサクサク読める(半ばにちょこっと、経済面から見た、バブル盛衰の解説がある。その部分だけ少し雰囲気が違う)。
本書の後半には、不動産価格の乱高下に翻弄されつつも、機転をきかせて乗り切った著者の体験談も詳しく記載されており、興味深い。
結局は世のカネ余りが土地神話を必要以上にワッショワッショイ担ぎ上げ、その祭りがさらに金を生む循環・・それがバブルだったってことなのかなあ。
そんな時代は、多分もう来ないんだろうな。
やっぱりちょっとだけ、バブル当時はうらやましい。
(497文字! バブル以降の株価崩落のチャートを見るたびに、「あの天井で空売りできれば・・」と思ってしまう。)