大きく出たタイトルに惹かれ購入。
読んでみると、近世末から現代にかけての産業・資本の発展を時系列的に解説した、壮大な経済史であった。
本書の特徴は、分かりやすさ。
平易な言葉で紡がれた経済の歴史が、一つながりとなって、するすると頭に入ってくる。
おそらく、著者の頭の中で長年存分に練られた経済歴史観の発露というべき作品なのだろう。
これまで、今一つ流れが把握できなかった歴史の転換期の疑問が氷解。
併せて、経済の仕組み、政治体制との関連、それらの内包する問題点等も併せて理解することができる。
読み終えて、経済史について、俯瞰的な視野を得られた気がした。
なお、著者はマルクスの研究者として名高いという。
とはいえ、左派的な考え方に偏る風でもなく、勢力を伸ばし主流となっていった資本主義に対して、距離を取って観察している感じ。それが良い形で、ニュートラルな視点につながっている。
もちろん、分かりやすさを優先し枝葉を削ぎ落している部分はあろうし、また、個々事例の解釈については異論もあろう。
ただ、大まかな流れとしては、本書1冊読んでおけば全体像が把握できるのではないか。
今年これまで読んだ中で、一番良かったと思える本だ。
(500文字! 学生時代にこんな本を読みたかったと、強く思う。)