サウジアラビアというと、従来は非常に厳しい宗教国家というイメージがあった。
しかし、最近では観光客にも門戸解放、海外資本の進出も加速、女性への規制も一部緩和など、ずいぶん変わってきているという話も聞く。
宗教国家がそう簡単に国の方針を変更できるものか。その変遷の経緯がわかりにくく、余計に謎めいて見える国でもあった。
本書では、そんな謎多き国、サウジアラビアについて、国の成り立から、現在への流れをわかりやすく解説。
特に興味深かったのは当国においては、政治と宗教、それぞれをつかさどる家系が異なるという点。ある意味、元から政教分離的な面があるという。
また、サウジのもう一つの顔である「石油国家」の運営に関しては、宗教とは一定の距離を置いた人選を行っている点も興味深い。
そのような経済セクター主導で、イスラム過激派によりもたらされた「不寛容なイスラム」のイメージを国家主導で変えようとしている事情も本書により理解できた。
その一方で、国内にはイスラム原理主義的な勢力、非主流派と言えるシーア派も依然内包している。そんな国家が宗教と経済開放路線を今後バランスしていくことができるのか。今後、ますます要注目の国だ。
(500文字! 堅苦しい本かと思いきや、著者あとがきによれば「新幹線のぞみが東京・大阪間を往復する間に読まれることを想定して書いた」とのこと。そのため、私のような「サウジ素人」にとってとっつきやすい良書であった。)
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